レポート一覧にもどる

2021.03.19

同一労働・同一賃金の取組

SHARE THIS ARTICLE

  • mail
  • facebook
  • twitter
  • google+
  • pintarest
  • link

中小企業は2021年4月から同一労働・同一賃金の取組が義務つけられている為、各社からこの課題に対する相談が多く寄せられました。今回は、担当コンサルタント特定社会保険労務士新田香織氏から、当取組について好事例を共有いただきます。

 

Q.企業様からの相談で、どのような相談が多く寄せられましたか?

A.非正規労働者を雇用する企業は、同一労働同一賃金への対応が求められていますが、具体的に何をやったらよいのかわからないので、まずは基本的な法律の考え方を理解したうえで、具体的にどういう対応を取ったらよいのか教えてほしいという要望が多くありました。また一見すると正社員とあまり変わらない仕事をしている契約社員がいる企業や、定年後の再雇用者がいる企業では、特に正社員との待遇の違いについて、現状のままで問題はないかという確認もしたかった様です。

待遇差が不合理なものでないか確認が必要

Q.相談内容に対して、助言をする際に注意した点を教えてください。

A.まず、同一労働同一賃金の正しい理解が必要になりますので、パート・有期雇用労働法をもとに、「均等待遇」と「均衡待遇」について説明させていただきました。この法律は、正社員と非正規労働者との待遇に差があること自体を否定するものではありません。正社員と非正規労働者の間で「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」「その他の事情」を考慮したとき、同じ待遇にすべきなのか、または待遇に差をつけるにせよ、その差が不合理なものとなっていないかを確認する必要があります。また法律では労働者から待遇差について説明を求められたときに、企業は説明する義務がありますので、正社員と非正規労働者では、具体的にどういう違いがあるのかを予め整理しておくことが重要です。

 

次に、正社員と非正規労働者の違いを整理するために主に下記の3点を支援しました。

① 雇用形態(正社員、契約社員、パート社員など)ごとに就業規則に基づいて、各種待遇(給与、賞与、退職金、休暇、福利厚生 等)を比較し、その違いの程度を可視化する作業

②「職務の内容」が近いと思われる正社員と非正規労働者の従事している業務内容、当該業務に伴う責任の程度、異動の可能性やその範囲、採用時に求められる能力、給与・賞与・退職金の性格(決定時の構成要素、支給額等)等を比較する作業。

③ 非正規労働者の各種待遇についての「その他の事情」の有無を確認する作業

上記の②と③の作業により、①で可視化された差が不合理なものとなっていないか具体的に検証することが可能になります。

例えばアパレル業界の場合、同じ店舗にいる正社員の店長とフルタイムのベテラン契約社員との間で業務内容や責任に大きな違いがないように見えることがありますが、②で実態を書き出して比較してみると、正社員には契約社員と違って、販売戦略の立案、売上目標に対する責任、労働者の労務管理などが課されていることなどに気がつきます。また正社員は店舗以外にも本社や他部署への異動などにより長期的視点で育成し、企業の中核人材になる能力を見込んでの採用である点で、非正規の販売員の採用とは求める能力や判断基準が違うということが明らかになります。さらに③について確認することで、①で可視化された正社員と非正規労働者の各種待遇の差が不合理であるのか否かを判断することが可能になります。もし不合理な差がついているのであれば、どういう改善や配慮をするのが良いのかを考えていくということになります。

 

Q.今回コンサルティングをして、どのような成果がありましたか?

A.正社員には支給している賞与をパートには支給していない企業では、①②③を実施した結果、正社員とパートの違いが明確になっていることが確認でき、さらに賞与の代替措置として報奨金を支給していることなどから、不合理というほどの差はつけていないと人事担当が理解できるようになりました。また正社員と定年再雇用者との間で職務内容の差が曖昧になっていた企業では、②によって再雇用者が携わる業務内容とその責任について再定義したことで、その結果を現場マネジメントに正しく反映する様に社内通達することができました。この企業では現在、職務内容にかかわらず一律に賃金を減額していますが、今後は職務内容に連動した複数パターンの賃金制度の導入を検討すべく、社内で情報収集していく必要があるということに気がつきました。

 

Q.最後に、中小企業の皆さまに対して一言お願いします。

コンサルタントの新田社労士

A.非正規労働者の中には、能力も意欲も高い方が沢山おられます。人事戦略面からもこうした労働者が能力発揮できる様に、評価制度や正社員転換制度を検討してみても良いかもしれません。正社員と非正規労働者の差で争点になりやすいのは、給与・賞与・退職金だと思いますが、企業としては社会の動向や裁判例をもとに慎重に対応することをお勧めします。但しこれらの待遇について争われた裁判の中には、一審と二審または最高裁で判断が逆転することもありますし、個々の会社によって事情等は変わってきますので、判決を鵜呑みにするのではなく、自社だったらどうなのかという視点で検討してみてください。

SHARE THIS ARTICLE

  • mail
  • facebook
  • twitter
  • google+
  • pintarest
  • link