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2018.11.29

育成・定着支援
(団体課題別人材力支援事業)
今だからこそ!
産地の地場産業を見て、触れて。

~「尾州・テキスタイル・カレッジ」 尾州産地研修 (2日コース)~
実施レポート

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2018年11月29、30日の2日間、一般社団法人日本アパレル・ファッション産業協会では、人材育成事業の一環として、日本で最大の毛織物産地として有名な尾州の紡績~染色までの6か所の工場を回る「産地勉強会ツアー」を実施した。

アパレル・ファッションの根幹を支えるデザイン力と素材力。

消費者の好みが多様化する中、ストーリー性のある商品が求められる今だからこそ、産地に赴いて現場の職人と意見を交わし、布の特性や強みを再認識することを目的に、それぞれの職人の皆さまに具体的な技法や興味深いお話を伺った。

 

 

 

羊毛が梳毛糸になるまでの工程~紡績~

 

ウールといえば尾州、今回の見学ツアー1社目は、紡績工場。アルパカやモヘアなど毛足が長く紡績が難しいとされる獣毛原料を得意とする東和毛織(株)である。あらゆる国から届いた毛の繊維を紡績する会社で、100年以上の歴史と小ロット・多品種に対応できる設備背景を強みがある同社では、実際の羊毛を手に取りながらの「整えられた状態の羊毛を輸入して、紡績が始まるのです。毛を洗い(洗毛)、羊毛をほぐし整える工程は日本ではできないのです。」と紡績工程の説明から始まった。

 

開放感のある工場の中は、仏式紡績と英式紡績の機械が常設されている。今世界中で主流となっているのは、仏式紡績。櫛のようなこの道具で毛をとかし、伸ばしていく。仏式は効率が良く大量生産に向いているそうだが、針のような櫛を使うため、毛を傷つける恐れもあるそうだ。一方英式紡績は櫛を使わず、少しずつ繊維を低速回転で撚りながら、糸にしていく。仏式より効率は悪いが、繊維に優しい品質本位の小ロット多品種の糸を紡ぐことができるのだそうだ。糸をまくものは昔ながらの木製で、合理化の流れに衰退し今では希少な設備なのだそうだ。見学できた参加者からは、「紡績工程の全体にかかる期間はどれくらいか?」などと、普段は聞けない質問がここぞと飛び変わった。

 

 

 

織りの3原組織を手織り体験し、高速織機と最新の丸編みを体感織りの3原組織を手織り体験し、高速織機と最新の丸編みを体感

 

経糸と緯糸の組み合わせ次第で無限に広がる織物の世界。今回の産地見学ツアーにご協力いただいた「尾州・テキスタイル・カレッジ」の舘講師より、参加者全員で3原組織の手織り機での体験をさせていただいた。困惑あり、笑いありの体験となり、実際の工場見学と移っていく。

 

分業が進んでいる尾州の中で中心となっている存在である中伝毛織(株)を見学させていただいた。世界中のハイブランドから指名入りで注文が絶えないその理由は、信頼できる確かな品質と、デザイナーのどんな要望も正確に形にしていく技術力と生産体制だ。未来のトレンドを読み解いて、戦略的に機械に投資をするというサイクルが出来上がり、熟練の技術者と若手・中堅の人材をバランス良く配置した同社では、織物とニット、糸染め、整理工場を自社及びグループ会社で成立させる環境が、産地として周りに工場が集積していることもあり、幅広い要望への柔軟な対応が取れるのだと納得する。

 

 

 

生地に無限の効果を与える意匠糸に感動

 

織物や編物をつくるとき、形状変化をつけてみたいと思ったら、意匠糸を使ってみるのも一手。意匠撚糸(ファンシーヤーン)は様々な種類があり、それらの特性や形状によって織物やニットの風合いやデザインに変化を与え新しいテクスチュア(特殊な表面効果)を生み出す。

尾州で長年、付加価値を追求したファンシーヤーンをつくってきた意匠糸の小笠原に伺った。一軒家とも思える小さなアトリエ兼工場に入ると、探求熱心な研究がうかがえる色鮮やかな意匠糸が展示された部屋に案内された。原料別、用途別、形態別の糸の種類の説明から、布地や製品になったときのデザイン効果の密接な関係を、実機を動かしての説明に参加者の心が動かされたここで、1日目の見学コースを修了となった。

 

 

 

10万点の素材の常設展示に圧巻

 

2日目は、国内最大のテキスタイル資料館「テキスタイルマテリアルセンター」への訪問から始まった。日本全国素材展から、中国、イタリアの素材展に出品した生地見本が10万点以上、細かく種類別に区分けされ展示されている、まさに生地の宝庫だ。さらに毎年3千点以上の最新素材が集まる仕組みを構築しているという圧倒的な組織力。これだけの生地を比較できる環境に、参加者も思い思いに手に取り、触り、質問し、とワクワク感が止まらない量に圧倒されていた。

 

後半は、(株)イワゼンの岩田善之社長によるジャカード講義が行われ、日本を代表するクリエイターとの共同開発秘話などを含めた起承転結のあるおもしろい講義に、参加者の興味はいろいろなテキスタイルに注がれた。

 

 

 

ションヘル織機で昔の技術を大事にする思い入れ

 

続いて、木曽三川の豊かな水に恵まれ、世界の名だたる海外ブランドを魅了し続ける織物工場紳士服地製造の葛利毛織(くずりけおり)工業(株)にお邪魔した。創業100年、素材の良さを生かした手織りに近い風合いの丁寧な生地づくりを続けてきた同社。設備は「ションヘル織機」と呼ばれる10台の低速織機を保有している。1950年頃に国内で普及した国産の織機をメンテナンスしながら大切に大切に受け継いできた。

古い木材と鉄筋が共存し、光が多く入る工場は、年期の入った織機が並び、がっちゃん、がっちゃんと心地よい独特な大きな音が聞こえてくる。経糸を一本一本小さな穴に通す「綜絖通し」という実体験を含めた工場内の設備をひとつひとつ丁寧に説明していただいた。

「大量生産・低コスト」への転換期を迎え、50mを織るのに3~4日ほどかかる生産性の低いシャトル織機を多くの工場は廃棄していく一方、その道を選ばなかった同社の方針に、生産側、企画側とコストのものさしではない、本物のものづくりと、その価値に向き合う時間となった。

 

 

 

生地に命を吹き込む仕上げ工程

 

ツアー最後となる訪問は、尾州産地の仕上げ加工を数多く引き受ける(株)ソトーは大正12年の創業だ。

広い敷地と大きな建物の中には、業界トップクラスの最先端の生産設備が並んでいる。繊維は衣料素材になるまでに様々な加工技術を要するそうだ。

織機で織り上がったばかりの織物(原反)は、紡績油や汚れが付着しており、そのままでは衣料素材として成立しない。同社の感性と先進のテクノロジーで、汚れを落とし、染色し、織物の表面を整えたり、起毛させたりして表面感を出す技術は、業界全体のクオリティを向上させている。

ごわごわした手触りの原反からお客様の求めるイメージの生地へと仕上げていく過程には、多くの設備と開発環境、また素材に合わせた職人の技術が必要だと再認識した見学となった。なかなか見ることのできない光景に、説明に聞き入る参加者たちのなかには、時折熱心にメモを取る姿も見られた。

 

 

 

<人材育成委員会担当>

一般社団法人 日本アパレル・ファッション産業協会 事務局:川名

 

<人材育成委員会担当>

アパレル・ファッションコンソーシアム

一般社団法人 日本アパレル・ファッション産業協会 事務局:川田・川名

アデコ株式会社 担当:町田

 

※本事業は(公財)東京しごと財団より委託を受け、アパレル・ファッションコンソーシアムが運営しています。

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